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突然のカンゲキ

沖縄に住む親友が、急に関西に来るという連絡が来た。

彼女とは中学高校が一緒で、私にとって唯一と言っても大げさではないくらい心の通じ合う仲だ。

結婚した時もほぼ同時で、電話でお互いにびっくりしたし、妊娠した時もほぼ同じタイミングで、予定日が当初同じだったのには鳥肌がたったし、爆笑した。

聞くと「維新派の最後の公演を見に行く」のだと言う。

維新派は私の周りの人からも「絶対に一度は観に行ったほうがいい」と言われていたのに、また今度行けばいいやと思って見送っていた。最近になって、主催の方が亡くなってしまわれたので今回限りで解散するのだという話は耳にしていた。

沖縄からはるばる親友が来る&奈良の平城京跡で維新派最後の公演。

本当はこの日から神戸で開かれている「森田雄三ワークショップ」に参加するつもりでいたのだけど、こんな「レア」が重なることも稀なので、親友に会いに、維新派の公演に向かうことにした。

 

奈良って、どうしてあんなにのどかなんだろう?

昔、けっこうな都だったはずなのに、全くその気配がない。

超田舎だし、観光で儲かってるふうでもない。

雄大っぽい空気がたゆたっている。

まだこれで二度目だったけれど、京都から訪ねる奈良には「大物感」が漂っている気がした。

 

会場について親友と再会し、先にたまたま着いていた友人と当日券の列に並んだ。

手作りのあばら屋台がぐるりとまあるく空間を囲んでいて、その隣に大きな舞台がそびえ立っていた。

 

そのまあるい屋台村には色々なごはん屋さんだったり雑貨だったりが売られていて、青空バーバーもあった。真ん中には空中ブランコの装置みたいなのがあって、全体的にできそこないのサーカスっぽい空気が漂う。

土の上に、板がぶっきらぼうに置いてあって、それをみんなベンチにして座っている。

呑んだくれから幼な子まで、のびのびとした空気で遊んでいる。

私も親友も、こういう感じが大好きなので、異国っぽくもあり、ちょっと興奮した。

私は私で京都の知り合いと何人も会うし、親友は親友で沖縄の友人と何人も会っていた。どれも偶然だ。

沖縄で野猿のような3人の男の子を育てている親友と、お年頃の娘とまだ無邪気な息子のいる私たちが大人二人だけで会うのなんて、もういつぶりなのか?全く思い出せなかったけど、私たちは中学生の頃のようになんでもないことを喋っては、笑って、何の違和感もなく、奈良の野原にぽっかりとできた、混沌の輪の中にいた。

 

隣にそびえ立つ、大きな鉄筋の骨組みでできた会場へ階段を登っていく。

当日券な私たちは、一番後ろの一番高い場所から船底のような舞台を見下ろす席。

客席も舞台もその向こう側の野原も、全てが見えた。

初めて観た維新派の印象は「音楽がすこぶる素晴らしい」のと「ダイナミックな舞台がかっこいい」のと「きっちり計算されまくりまくった人たちの動きの凄さ」という感じ。あと、最後の方で舞台の向こうにライトアップされた野原が金色に輝いていて、黄泉の国っぽかったのがすごく美しかった。

親友と一緒に沖縄から来ていた元維新派のスタッフだったという方は、最後のシーンで「おーい!」「そこはどこですか?」「こんど、いつ会えますか?」などと演者たちが全員で口々に呼びかけるシーンがあるのだけど、そこで号泣したと見終わってから言っていた。私は、維新派を主催してきた松本雄吉さんのことを全く存じ上げないので、そのシーンを見ていた時も、松本さんという死者に向かって呼びかけていると全く思っていなかったけれど、そう聞いたら、そうかそういうシーンだったのかもしれないと、やっと思った。私は松本さんを知らないで生きてきたので、喪失感がないまま見終えてしまったというか、見ている間、この主催者が亡くなっていたことも忘れていたくらいだった。なので、そのように聞いた時、ハッとした。

 

不思議な擬音語のようなセリフと、打ち込みに乗せてくる即興の音と、規則的な人の動き。

 

はっきり言って、よくわからなかった。だけど音がすごく良くて、セリフすら音楽の一部で、動きはそれら一連の音楽に乗せた走馬灯のようで、舞台や観客席含め、壮大な夢みたいだった。

泣いたり感傷的になることは一切なかった私だけど、舞台の向こう側に金色の野原が光った時には、目を奪われたし、この瞬間だけ共有できていたら、いいような気さえした。

 

観終えて、階段を降りると、そこは手作り感あふれまくる屋台がまあるく建っていて、うろうろ見て歩くだけでも、楽しかったし酔っ払いそうだった。

 

帰り道、親友とやっぱりどうでもいい話とか最近のお互いの状況とか話しながら、くだらないことで、ずーっと笑いあって、ライトアップされている平城京にどこまで近づけるんだろね?と見に行ってみたらものすごい無防備に、建っていて、周りは野っ原で、いいのー?まじかー?なんでー?と言いながらすごく近くまで行って、最後の門をよく見たら鍵がしてなくて、えー!ってなって、無防備すぎでしょ!開けちゃうよ?なんてふざけていたら、親友が警備会社のシールを見つけて、そりゃそーだ、と開けずにそっと立ち去った。

帰りに、電車のホームで親友が「ポテト食べたい!」と突然言い出したのでそのホームにあったロッテリアでバケツポテトとドリンク2つがセットになったものを頼み、二人でだらしなく食べながら「うちら40でこんななんて、全然何も変わんないねー」と笑った。中学生かよ、と自分でも思う。同級生たちはきっとこんな風に一緒にポテトなんて食べてくれないよね、と言うので、そうかな?みんな変わってなかったよ?と思ったけど、こんな風にだらしなくなんてポテトを一緒に食べてはくれないだろうな、と私も思ったので、確かにうちらだけかもね〜と笑って二人ふたり電車に揺られていった。

 

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